8th AL「Love Eater」(1994)

無敵で最強の大名盤

1993年7月31日(土)に開催された2度目の横浜スタジアム公演。芸能的な面が取り沙汰されがちなこのライブですが、この日のハイライトは間違いなく "ルーシータクシー" でした。公演の1週間前に発売されたばかりのシングル "We are OK!" のカップリング曲ですが、ファンキーなリフがライブで披露されるや会場がモンキーダンスの渦となり、ナガマリ・ネクスト・ステージの祝祭と化したのです。

そこから "my sweet days" に "Cherry Revolution" とシングルが発売されていくのですが、そのカップリング曲が "DUNK! DUNK!" に "Katcho Bee-Bee-Boo" と、もう往年のロックへのリスペクトが半端ないんですよね。レッド・ツェッペリンやディープ・パープルはもちろん、オールマン・ブラザーズ・バンドブラック・クロウズなど、ブルースを基調にしたサザンロック勢がいかに真理子さんに影響を与えていたかが如実に表れた作品、それが8枚目のスタジオアルバム『Love Eater』なんです。

というか、"We are OK!" がそもそもの出発点ではないかと。もちろん、アルバムには収録されていない楽曲ではありますが、このシングル曲を制作したことで真理子さんは以前の永井真理子を完全に吹っ切ることができたのではなかろうかと。<ココロの虫歯が夜しくしく痛んでも ダメな時はダメ また元気になるさ>と、<SMILE 心配しないで歩いて行こう BE HAPPY WITH ME>と、このような心境に至ったのは前作『OPEN ZOO』のコンサートツアーでの経験から得られたもののような気がするのです。ファンの方たちやバンドメンバーと好きな音楽を好きなように好きなだけ楽しむことができる。当然のように "ZUTTO" や "ミラクル・ガール" を求める声もある中で、アッカンベーができるようになった。"La-La-La" で<丸い地球を歩き疲れて><靴と心が0センチまですり減った>そんな疲弊感から、アンサーソングである "タンバリンをたたこう" で、<感動してしてもらうことばかり考えて 一人カギをかけ 髪をかきむしってふさぎ込む>ような生活を抜け出し、<We are happy to be here with you>と、一緒に音を奏でていこうと。アーティストとして、暗いトンネルを手探りで抜け出した先の光、その無敵感がこのアルバムを大傑作にしているのです。