11th AL「ちいさなとびら」(2000)

ミレニアムの異種格闘技戦

変な話ですけど、世界って1999年の7月で終わると思ってたんですよ、自分。いや、本気で信じてたのか?と言われると、ほとんど朝の占いレベルでくらいしか意識していなかったんですけど、それでも'99年の7月が当たり前のように過ぎて、8月になり、年の瀬が迫ってきた12月に、どうやら2000年というのはミレニアムというらしいと知り、年末のカウントダウンでハッピーミレニアム!なんて騒いでいても、なんていうんでしょ、そっか、普通に人生は続いていくんだなぁと思ったんです。終わって欲しかったわけじゃなくて、なんか生きていく長さって途方もないような気がしたというか。

そんなミレニアム(どんなミレニアム?)にリリースされた11作目のスタジオアルバム『ちいさなとびら』。もうね、当時は来るところまで来たかなと思ったものです。だって、ナガマリじゃないんだもん。帯のないジャケットだけを見たら誰のアルバムなのかもわからないし、風船ガムがはじけちゃったというところも、なんか膨らんでいた何かも一緒にしぼんじゃったような気がして。

感じ方によるのかもしれませんが、東芝時代になってからの真理子さんというのは、野球に例えていうなら、今までバリバリのセ・リーグのスタメン選手だった人が、急にパ・リーグのピンチヒッターになってしまったみたいな感じが、自分の場合はどうしてもしてしまいます。歌詞的にも、松本隆氏の<愛が醒めていく いきなり加速度を増して壊れていく><もらったペンダントなくしたの>、遠藤響子さんの<生きるスピードがわからなくなる>など、ネガティブなワードが多く、その世界観もわからなくはないのですが、どうもナガマリチックではないというか。サウンド的にも、西川進さんのゴリゴリのギターロックは嫌いじゃないし、THE BOOMの小林さんとか今まで絡みのなかった方達とのコラボもいいのですが、ナガマリじゃない感がどうしてもつきまとうというか。そんな中でも "くちびる銀河" はうまく機能している楽曲だとも思います。

んでもっての、真理子さん作詞・作曲の "12月の空へ" です。冒頭から<ガラスに笑顔が映るその度に 嘘でできてる自分が嫌になっていく>と、サビでも<空よ 私の生まれた12月の空よ そんな簡単に心なんか開けない>と、あまり穏やかでない心境が綴られています。この楽曲がすべてではないと思いますが、やはり、このミレニアム・アルバムを象徴するような楽曲だとも思わずにはいられないのです。

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