1st EX「会えて よかった」(2020)

完全無欠の原点回帰

こちらのアルバムも、リリース時に全曲レビューをしておりますので、そちらをリンクしておきます。

それにしても、いろいろな意味で運命的な巡り合わせになってしまった作品。その最たるところは、やっぱり、あの『OPEN ZOO』以来の、誰もが心のどこかで待ち望んでいたナガマリ&前田先生の新曲が、30年の時を越えて本当に実現してしまったというのがね。もちろん、サイケデリックに走っていた頃を否定するわけでもないし、インディーズ・ロックをかき鳴らしていた時はちょいと頭をよぎったけど、オーストラリアに旅立たれた頃には、もう無理だ、絶対に戻らないと諦めてしまった、あの王道のど真ん中を走る真理子さんの姿。それが拝めたというだけでファン冥利に尽きる作品だと思うんです。

僕らがナガマリに出会ったのって、時期の差はあるにしても、だいたい "ミラクル・ガール" 前後になるわけじゃないですか。その頃って、テレビやラジオから流れてくるヒット曲に、ただただ普通に親しんでいたわけで、真理子さんもその中の一つに過ぎなかったはずなんです。でも、そこで何かが自分にフィットした。その原体験って、やっぱり強烈なんですよ、どんな人にとっても。昔の歌はよく覚えているけど、最近の歌はぜんぜん覚えられないって、よくあることだけど、それもそういうことなんですよね。フィットするかしないかなんです。で、真理子さん自身が、その原点にここで舞い戻ったというのは、これスゴイ重要なことだと思うんですけど、10年間の空白期間がお互いの原体験を復活前の20年間にまるっとまとめちゃったからではないかと。それって、どういうことかというと、酸いも甘いもぜんぶ復活前の20年に凝縮されちゃって、残るのは永井真理子という存在だけになってしまったと。

この作品以前にも、昔では考えられなかった根岸さん時代のヒット曲を普通に歌う真理子さんの姿があって、このあとにリリースされるセルフカバーアルバムも、ライブのセットリストも、びっくりするくらいに20年間をまるっとまとめた内容になっているのです。そこからの原点回帰の旅は、コロナ禍の影響もあり、発売から2年以上経っても未だに完結していません。この10月に開催されるリリース記念ライブで、今まで披露されていなかった "逆転の丘" が初めて演奏された時、あらゆる意味での永井真理子が復活するような気がしてならないのです。