13th AL「AIR」(2004)

自浄作用からの再出発

今ではYouTubeなどのストリーミングやiTunesなどのサブスクリプションが普通になっていますが、ひと昔前はインディーズ・ロックと聞くとマイナーなイメージしかなく、その流通規模から、なかなか一般のリスナーまで音楽が届くことはありませんでした。さらに、かつてはスタジアムを埋めるほどの人気を誇っていたアーティストが小規模な活動でミニマルになっていくというのも、時代というか、イチファンとしてなんだか寂しい気もして。ここでもう一発、ドカンと大きな花火でも上げてくれないかなと、巷でにぎわうフェスなんかを見ながら思ったりもして。だけど、アーティスト側からすると、そこには絶対に行かないんだろうな、というのもイチファンだからなんとなくわかったりもして。

自主レーベル「BLUE TONGUE」を立ち上げ、ゼロからナガマリ&COZZiで作り上げたアルバムが13枚目のスタジオアルバム『AIR』になります。BLUE TONGUE=青舌とそのまま訳すべきなのか、BLUE TONGUE=蒼い言葉と訳した方がいいのかはわからないのですが、いずれにしても、あまり健康状態がよくない、もしくは大人になりきれない未熟さみたいなイメージがあります。まあ、レーベル名だけですべてを表現しているわけではないと思いますし、ブランド名に意味を持たせてもという感じもしますが、作品を作るうえでのスタンスみたいなものは、少なからずこの単語の中に含まれているような気もします。

オーストラリアという新天地の空気を存分に吸収して制作されたアルバムは、全体的に緩やかな曲が多く、それはそのまま当時の真理子さんの心の状態を音像化したのではないかと。"蒼のまま" や "光に向かって" や "風が吹く時" の、なんて言うんでしょ、こう自分を鼓舞するための音楽が、当時はディストーションだったのかなと思う反面、"私の一日の真ん中で" や "You Rock" "Tobujikandesu" のようなシンプルなロックも健在。"やさしい空気" や "天国の島" "おやすみ" のアコースティックは、その悠久の時に身をゆだねる心地よさがあります。個人的には "ふたつの心" が大好きで、ちょいとファンク寄りの跳ねたリズムがカッコよすぎなんですが、これもオーストラリアという多国籍文化に触れることで初めて着想を得られた楽曲なのかなと。いずれにしても、復活後の真理子さんとCOZZiさんの制作スタンスの礎は間違いなくこのアルバムで、今現在につながる小さいけれども大きなターニングポイントといえます。

AIR

AIR

  • 永井 真理子
  • J-Pop
  • ¥2444

music.apple.com