14th AL「Sunny Side up」(2006)

陽の当たる場所へ

最初に言っておきます。ナガマリ14枚目のスタジオアルバム『Sunny Side up』が、真理子さんの最高傑作であり、最高到達点であり、揺るぎない名盤だと断言します。んなわけないだろ!という反論は認めませんし、これで最高かよ!という茶々も認めません。これが最高で、これが最大で、これがナガマリです。ジャケットも最高なら、ブックレットの中身も最高で、収録されている曲順も楽曲も歌詞もメロディもアレンジも全てがすべて最高。ビートルズでいうなら『アビー・ロード』、ツェッペリンでいうなら『レッド・ツェッペリンⅣ』、エアロスミスでいうなら『ゲット・ア・グリップ』みたいな。

2006年という時代を振り返った時、思い浮かぶのはダニエル・パウターやジェームス・ブラントなどの泣きメロディの復刻が特徴で、そこにインスパイアされたのかどうかはわかりませんが、アニキが紡ぎ出すメロディがまた天下一品なんです。この頃に共同制作していたYUIから、若い原動力を受け取ったという面もあるかもしれませんし、そこからの化学反応なのか、真理子さんまで "story" で泣きのメロディを披露していたりします。なにはともあれ、全体的にメロディが秀逸で、拱手傍観してる場合じゃないだろー!と歌う "TRAIN" でさえ、高みに昇るようなメロディとリフが全開というのが、このアルバムの勢いがとんでもないエネルギーに満ちていることを裏づけています。

1曲目の "paper plane" で<昨日の日記を破って作った紙飛行機>を空へ飛ばし、そのまま "空へつづく階段" を駆け上がり、"ミエナイアシタ" で見えてきた<迷いの先にのぞく晴れ間へ>と進んでいく。"NORTH BRIDGE" や "BlueのVespaで" のオーストラリアの風景、そこから導かれるのは "story" で歌われている<風向き通り 逆らわず進もう>というナチュラルな心情。"TRAIN" で日本とオーストラリアを比較し、<ずっとアゴ下げていると過去の傷思い出すの>と、"このこころ" では空を見上げて全てを抱きしめようとします。藤野くん提供の "fortune smile on me" で<幸運を全て吸い込め>と、"small history of love" では<胸に詰まった重い雨雲>をふっと息でかき消し、ラストの "ひかりの粒" で<希望を残したまま 運命に乗って>これからを生きていこうとアルバムは幕を閉じます。

2005年に開催されたアコースティック・ツアーの会場限定で発売されたEP『BOIL EGGS SOFT』がゆで卵なので、『Sunny Side up』はさしあたり目玉焼きなのかなと思いますが、ジャケットが表しているように「陽の当たる高みへ」という意味が、やっぱり釣り合うのかなとも思ったり。

Sunny Side Up

Sunny Side Up

  • 永井 真理子
  • J-Pop
  • USD 13.99

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