2nd AL「元気予報」(1988)

エナジーがあふれる表現への欲求

前作のファーストアルバムから、わずか5ヶ月という怒涛のインターバルで発売された2枚目のスタジオアルバム『元気予報』。この驚異的な短さは、思うに前作と同時進行で制作されたのではないかと勘繰ってしまうのですが、だとするなら『上機嫌』と『元気予報』というアルバムは2枚でひとつの作品、姉妹的な関係にあるとも言えるのではないかと。モノクロームなジャケットデザイン、漢字表記のタイトル、さらには<じょうきげんきよほう>とタイトルがつながる構図とくれば、あながちな感じがしなくもない気がしてきます。まあ、完全に後付けですけど...。

このアルバムでのポイントは2つ。ひとつは作曲陣に辛島美登里さんと藤井宏一さんが加わったこと。そして、もうひとつは真理子さんが "Mariko" で作詞を手がけていること。前者については、セカンドシングル "瞳・元気" が辛島さん、シングルカットされた "Brand-New Way" が藤井さんと、どちらもシングル曲として大抜擢される躍進ぶりを見せています。ナガマリ初期を代表するミディアムナンバーとアッパービートがデビューして1年も経たないうちにお目見えしているところが凄まじいです。そして、問答無用の名曲 "Mariko" です。前田先生お得意の泣きのメロディにのせて綴られているリリックは、まさに真理子さんの所信表明。<自分になる旅に出ようと思うから><自分の夢(こと)信じてみようと思うから>。自分探しの旅なんていうと中二病をこじらせてしまった感がありありではありますが、それこそ中学二年の頃からというのは、そういう季節を乗り越えてアイデンティティを確立しなければいけない時期でもあるわけで。そういう点でいうと、真理子さんがアーティストとしてのアイデンティティを確立する重要な楽曲であり、リスナーもまたそれを共有体験することで同じように成長することができた楽曲でもあるのではないかと。

"親友" や "SO BAD"、"Karma Karma" に "3D NIGHTへおいで" と、UK寄りのハイエナジーな楽曲が粒揃いで、シーケンサーを駆使したアレンジは根岸さんの本領発揮なところでもあります。きわめてポップなアルバムではありますが、その1曲目に "Mind Your Step" をもってくるあたりに制作者側の気骨を感じずにはいられなかったりもします。普通のポップソングと思うことなかれ、と。