2nd BEST「Pocket」(1990)

キラキラとした自由時間

あの頃を思い返してみると、ベストアルバムって年末行事だったんですよね。今では年がら年中ではありますが、その昔は季節ものだったりしていて。だから、予約をしていた初回特典のベルトポーチ付きCDを買いに行った時も、レコード屋さんの中がクリスマスな感じになっていたのをすごく覚えています。もう、ホント、このアルバムは姐さんからのクリスマス・プレゼントだなと。自転車のカゴに、いつもよりちょいと特別感のあるCDが入った袋を入れて、ルンルンと足早に家路を辿った時の気分がとても最高でした。

この2枚目のベストアルバム『Pocket』を要約すると、もう "ZUTTO" 以外のなにものでもないわけでして、1曲目が "自分についた嘘" って最高じゃない?とか、"Mind Your Step" から "Higher In The Sky" までの流れって渋すぎない?とか、曲うんぬんよりも歌詞カードに載ってる真理子さんの写真がどれも素敵すぎてヤバくない?とか(自分ね、ライダース着てちょっと俯いてるやつが好きです。姐さんの顔が前髪で隠れてるとこがカッコよすぎてw)、そういった類のものも全て "ZUTTO" にもっていかれてしまうのです。

そもそも "ZUTTO" という曲は、なぜにここまで大衆性を獲得することができたのでしょうか。人気テレビ番組とのタイアップという答えが一般的ではあると思うのですが、変な話、そんなヒット曲は世の中に腐るほどあります。ラブソングという観点でも、<Heartの字幕 孤独(ひとり)にしといてなの>と、どちらかというとドライというか、ラブソング特有の切なさとか感傷的なものは、ここではなにも描かれていません。ただただ、そばにいるだけでいい、そんな時間を過ごせることが幸せ、そんな何げない日常のひとコマを切り取った恋人たちの風景。その根底には、さらりと男女が対等の立場にあって、かつ日々の生活に疲弊している側は女性であり、男性がそれをサポートしているという、今では当たり前のような男女関係の姿が、この平成が始まって間もない時代にちょうどマッチした。さらに、それを柔らかくフワフワと漂うようなボーカルで真理子さんが歌い上げたというのが、より "ZUTTO" の存在価値を引き上げたのではないかと思うのです。

それにしても、窓ガラスにソファが映るような部屋(高層マンションの上階と思われる)で、一度はエスプレッソってやつを飲んでみたいですね。